コイは日本全国に分布している一般的な淡水魚です。
古来から日本人の生活と関わりがあり、観賞用の錦鯉や鯉のぼりとして親しまれたほか、貴重な食用魚でもありました。
私の学生時代の友人が浜松の出身だったのですが、祝事でダム湖で養殖したコイを食べる習慣があるらしく、彼の実家にお邪魔した折には見事なコイの丸揚げをご馳走になった経験があります。
釣りをする人であれば、コイを知らない方はほとんどいないはずです。
しかし、あまり知られていないのですが、日本で見かけるほとんどが外来魚のコイです。
琵琶湖や四万十川には在来のコイが生息しているようですが、それらとは種レベルに相当するほど遺伝的に異なるといいます。
北海道の湖でトラウトフィッシングをしていても、コイを見かけるのは珍しいことではありません。
むしろフライやルアーに喰いついてきて、時たま釣れてしまうこともあるでしょう。
私も阿寒湖で大きなコイを釣ったことがあります。
ロッドに伝わってくる重みの割にはあまり抵抗せず、ゴーっと音をたてそうなほど一直線に寄ってきました。
まるで魚雷のようです。
あまりにも魚体が太いので、体周を測ってみると56センチでした。
ちょっとしたイトウの体長くらいはあります。
道北の朱鞠内湖でもコイを見かけることがありますが、ここまで肥えてはいないように思えます。
魚が太っているということは、それだけ個体の栄養状態が良く、生息環境に餌が豊富であるはずです。
コイは雑食性の魚で、主に底生生物や水生植物を食べています。
確かに阿寒湖ではワカサギ漁が盛んで体サイズも大きく、甲殻類のウチダザリガニも生息していますし、底質が砂地の場所では水生植物や藻類も見かけます。
したがって、阿寒湖は朱鞠内湖など他の湖よりも、自然由来の餌生物に恵まれているということが考えられるでしょう。
しかし、もしかすると釣り人の影響もあるのではないでしょうか。
それは、この地で盛んにおこなわれている「チャミング」という行為です。
チャミングとは、主にフライフィッシングにおいて、「ドライワカサギ」というフライを使用するときに少量のワカサギを撒き餌とすることを指します。
この釣り方は「ドラワカ」と称して人気を博しましたし、阿寒湖はフライの聖地として多くの釣り人が訪れます。
するとどうでしょう。一回に撒かれるワカサギは少量であっても、それを毎日数十人が撒き続けたとなると、結構な量になるのかもしれません。
以前に考察した大島で見られるニジマスの体型のニ形性も然り、阿寒湖の魚雷を生み出しているのは釣り人の撒いたワカサギなのかもしれないと思います。
しかし、すべては湖の中でおこっていることですし、各地でわざわざコイを釣って比較してみるほど興味のある魚ではありませんので、真相は阿寒湖のマリモのみぞ知るといったところでしょうか。